葉山町の耳鼻咽喉科・小児耳鼻咽喉科・アレルギー科

葉山かどくら耳鼻咽喉科

〒240-0112 神奈川県三浦郡葉山町堀内674-1
(逗子駅からバス8分 風早橋バス停前)

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休診日 :水曜・日曜・祭日/土曜午後休診

禁煙治療のススメ

禁煙外来

禁煙治療について

喫煙を単なる習慣や嗜好と考えるのではなく、ニコチン依存症という病気としてとらえ、適切な治療を行います。治療には禁煙補助薬を使用した、医師や看護師による禁煙指導が中心となります

ニコチン依存度テスト

以下の設問で 「はい」が5つ以上ある方はニコチン依存症の可能性が高まります。

 

  設問内容 はい
 
いいえ
 
1. 自分が吸うつもりよりも、ずっと多くタバコを吸ってしまうことがありましたか?    
2. 禁煙や本数を減らそうと試みて、できなかったことがありましたか?    
3. 禁煙や本数を減らそうとしたときに、タバコがほしくてほしくてたまらなくなることがありましたか?    
4. 禁煙したり本数を減らそうとしたときに、次のどれかがありましたか?
(イライラ、神経質、落ちつかない、集中しにくい、ゆううつ、頭痛、眠気、胃のむかつき、脈が遅い、手のふるえ、食欲または体重増加)
   
5. 問4でうかがった症状を消すために、またタバコを吸い始めることがありましたか?    
6. 重い病気にかかったときに、タバコはよくないとわかっているのに吸うことがありましたか?    
7. タバコのために自分に健康問題が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?    
8. タバコのために自分に精神的問題(※)が起きているとわかっていても、吸うことがありましたか?    
9. 自分はタバコに依存していると感じることがありましたか?    
10. タバコが吸えないような仕事やつきあいを避けることが何度かありましたか?    
     

※禁煙や本数を減らした時に出現する離脱症状(いわゆる禁断症状)ではなく、喫煙することによって神経質になったり、不安や抗うつなどの症状が出現している状態。

禁煙治療内容と費用について

1. 保険診療

およそ3カ月間の治療を行います。患者さんの自己負担総額は、初回1,800円・2回目以降1,000円ですが、薬は院外処方となり薬剤費が別途発生します。保険治療を受けるためには一定の条件を満たす必要があります

 

2. 自費診療

保険診療の算定条件に該当しない患者さんが対象となります。
費用は初回3,600円・2回目以降1,500円ですが、薬は院外処方となりますので、薬剤費が別途発生します。
必要に応じた回数にて治療を行います。

 

精神科・心療内科におかかりの方は、主治医とよくご相談の上、禁煙治療を受ける了解を得てからお申し込みください。

禁煙支援活動について

耳鼻咽喉科医として26年間、頭頸部癌治療に従事する一方、その主な発症原因となるタバコ問題を解決すべく昭和大学横浜市北部病院と当院に禁煙外来を設立し積極的に禁煙治療と啓発活動を行ってきました。

タバコ問題とは、多くの頭頸部癌患者さんが抱える以下の3点です。

1)    病気になっても喫煙を停止できない(ニコチン依存症)

2)    家族・同居者からの受動喫煙環境にある

3)    職場・公共施設での受動喫煙環境にある

 1)    頭頸部がんを発症してもニコチン依存症のため喫煙を停止できない

私が治療を担当した388例の頭頸部癌患者さんで初診時に喫煙していた方は141人でした。このうち頭頸部がんの診断が確定し治療中も喫煙を継続した方が少なくとも2417%確認されました。(表1)

 

疾患

患者数

初診時喫煙

喫煙継続

鼻・副鼻腔癌

31

10

舌癌

52

16

上咽頭癌

24

中咽頭癌

77

29

下咽頭癌

83

37

喉頭癌

121

43

合計

388

141

24(17%)

表1  頭頸部癌患者さんの喫煙継続率

 

この数字は患者さんの自己申告によるもので、実際にはさらに多い可能性があります。24人について問題となるのが、入院中の隠れ喫煙です。喫煙衝動を抑えられず放射線・化学療法中にも関わらずスタッフへ申告なく外出したり、院内トイレで喫煙するなどの行動から治療を中断し退院せざるを得ない症例も経験しました。初診時から適切な禁煙治療を提供する必要があります。

 2)    家族・同居者からの受動喫煙

頭頸部癌が病理診断により確定し画像検査によって病期が決定したタイミングで治療選択肢を提示し推定される予後を告知する必要があります。告知については、Key personのみならず、できるだけ多くの親族の同席を促し、集合しやすい時間帯(多くは診療時間外)に行ってきました。治療を完遂するためにはタバコ煙を吸引させない環境づくりが大切であることを説明し、同居家族及び治癒を願う関係者全員の喫煙状況を確認しました。

 3)    職場・公共施設での受動喫煙

日常生活において受動喫煙環境を回避するように指導しています。

 

耳鼻咽喉科外来と禁煙外来

20094月から昭和大学横浜市北部病院と連携施設に禁煙専門外来を開設しました。禁煙外来における禁煙治療総数は2019年まで387人となりました。

私達の行った禁煙外来治療終了者へのアンケート調査によると、禁煙に最も役立ったのは、医師の指導が69%と最も多く、次いで禁煙補助薬の使用23%でありました。1) 医師による「禁煙を促す一言」は、時として薬剤以上に効果を示すことがわかりました。

 

禁煙支援方法についての教育

1)医療従事者(医師・歯科医師・薬剤師・看護師・医学部学生

学会・医師会での講演、昭和大学医学部臨床講義、書籍2) 3) 4) 5)などで積極的に行ってきました。

2) 一般市町民

2002年より現在まで過去90回以上、北海道~沖縄まで講演会を開催しました。

 

禁煙支援に関するイベント

201011月より横浜市都筑区民祭り会場における禁煙相談会を計4回開催、区民祭り会場内で昭和大学横浜市北部病院の医師、歯科医師、薬剤師、看護師、医学部学生などが禁煙相談希望者に対応し、禁煙治療方法について情報提供を行いました。

 

耳鼻咽喉科領域の喫煙・受動喫煙関連疾患について 

1.頭頸部がんとタバコ煙

頭頸部がんは、頭部、顔面、頸部に生じる悪性腫瘍の総称であり、全がんの5%を占めます。部位別の頻度は口腔がん(舌>歯肉>口腔底>頬粘膜)が多く、次いで咽頭がん(下咽頭>中咽頭>上咽頭)、喉頭がんが主であり、他臓器のがんに比較して、難治性疼痛、摂食嚥下障害、呼吸困難、皮膚浸潤、音声言語機能障害、感覚器障害(聴覚・嗅覚・味覚障害)の出現率が高くなっています。

進行した頭頸部癌は呼吸困難・摂食困難を生じ、その半数は治癒せず死に至るため発症予防として禁煙及び受動喫煙回避指導が大切になります。

頭頸部がん発症要因についての詳細な報告は少ないですが、タバコ煙による鼻・副鼻腔、咽頭、喉頭の上皮への化学的刺激や機械的刺激などの直接刺激が発がんに強く影響すると考えられています。1984年平山は、副鼻腔がんに関して1.72.6倍の発症リスク6)2000Yuanらは上咽頭がんで2.473.28倍のリスクが上昇するとし7)

2012年櫛橋らは頭頸がん癌患者283例を検討し、喫煙のみならず受動喫煙が発がんに関連することを報告しています。8)

20014月~2018.10月までに昭和大学横浜市北部病院耳鼻咽喉科を受診し頭頸部がんと確定診断された524症例の喫煙率・受動喫煙率は高く、特に中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がんの症例における喫煙率は、それぞれ82%、91%、96%と高値で、これらに受動喫煙率を合算した喫煙・受動喫煙率については、それぞれ94%99%99%と異常高値でした。全頭頸部がん524例中の喫煙・受動喫煙率は94%となり、非喫煙非受動喫煙者が頭頸部がんを発症することは極めて稀であることがわかりました。既に、本邦における男性喫煙率の低下に伴って喉頭がん患者数は減少傾向となり、頭頸部がんの多くは、無煙環境により発症予防が可能と推定できます。

 

2.感音難聴、小児中耳炎とタバコ煙

近年、中年期以降の難聴発症に関して認知症発症リスクとの関連が指摘されており難聴の発症を予防することが大切です。9) 喫煙者では、内耳への血流障害を生じやすく感音難聴発症の危険因子となっています。喫煙のみならず受動喫煙と難聴発症について、2011Lalwani1219歳の非喫煙者1553例を検討し、受動喫煙に曝露された場合に、曝露されなかった群に比較し感音難聴の発症率が2倍高かったと報告し、そのメカニズムについては、微小循環障害、酸化ストレス、ニコチンなどの化学物質の内耳への直接障害の影響を挙げています。2013Weitzmanは、1215歳の964例に対して出生前のタバコ煙への曝露について、曝露されなかった群に比べて曝露された群は感音難聴の発症率が2.6倍高かったと報告しています。これらの報告は、若年層の感音難聴発症の一因として受動喫煙が関与することを証明した重要なデータです。10) 11)

小児が罹患する代表的な感染症として急性中耳炎が挙げられます。急性中耳炎は3歳までに5070%の小児が罹患するとされています。治療上問題となるのが、反復する中耳炎です。反復性中耳炎について小児急性中耳炎診療ガイドラインでは「過去6カ月以内に3回以上、12カ月以内に4回以上の急性中耳炎に罹患するもの」と定義しています。反復性中耳炎のリスク因子として、低年齢、起炎菌の耐性化、免疫能、生活・環境要因が証明されているが、この中で環境要因としての受動喫煙が指摘されており、中耳炎診療を行う際に受動喫煙環境の有無を確認し家庭内を無煙環境にすることが求められています。

 

3.嗄声・ポリープ様声帯とタバコ煙

喫煙者における声質は、非喫煙者に比較し低音、塑造となる傾向にあります。

タバコ煙の声帯粘膜刺激によって声帯左右全体が浮腫状に腫脹することがあり、この疾患はポリープ様声帯と呼ばれます。声帯へのタバコ煙刺激が継続されポリープ様声帯が進行すると声帯振動は障害され声質が低音化し発声困難、呼吸困難を生じることもあります。浮腫が軽度の症例は禁煙後に軽快することも多いですが、進行した高度浮腫症例では声帯の浮腫状変化は不可逆性となり、根本治療目的で手術が必要となります。良好な声質を保つためには声帯粘膜面は常に柔らかく振動しやすい状態が好ましく、声帯粘膜面を強く障害するタバコ煙を吸引しない生活が大切です。

 

4.頭頸部感染症・術後合併症とタバコ煙

 耳鼻咽喉科領域の重篤な感染症として、扁桃周囲膿瘍、喉頭蓋炎、深頸部膿瘍が挙げられます。抗菌薬投与や外科処置等で全身管理を行いますが、進行した場合に気道閉塞や敗血症を生じ死亡例も報告されています。発症危険因子として男性、肥満、糖尿病などが報告されていますが、喫煙は最も重要な危険因子の1つです。上条らは扁桃周囲膿瘍において、喫煙が発症に関与する理由として、①局所酸素分圧を低下させて嫌気性菌増殖を促す②局所循環を悪化させる③局所免疫状態を変化させる、と報告しています。12 

術後合併症に関して久利らは、頭頸部がん治療において再建手術を要した188例を調査し、創傷治癒合併症を減少させるためには、少なくとも術前3週前からの禁煙期間が必要であったと報告しています。13)

 

スポーツドクターとして

私は、2009年、2010年世界デュアスロン選手権に選手として出場した経験があり、現在まで日本スポーツ協会認定スポーツドクターとして世界トライアスロンシリーズ横浜大会における医療救護支援も行ってきました。(デュアスロンは、トライアスロンと類似したスポーツで、第1ラン510km、自転車3040km、第2ラン5kmを順に行う複合競技)

タバコ煙が、競技者のみならずスポーツ大会開催に関わる全ての人体に悪影響を及ぼすことは容易に推定できます。 30分程度のわずかな受動喫煙で血管内皮が障害を受けることが証明され14)、国内全ての公共施設内を禁煙と規定できるような科学的根拠は揃っています。

 

参考文献

1)  篠 美紀, 斎藤 洋幸, 滝口 修平, 櫛橋 幸民, 鈴木 美雪, 山田 良宣, 門倉 義幸,加濃 正人, 洲崎 春海:

  耳鼻咽喉科における禁煙外来の検討. 日本耳鼻咽喉科学会会報,114(8):721-725,2011.

2)   門倉義幸:アデノイド・扁桃肥大・扁桃炎. 今日の治療と看護 第3版,南江堂,東京,2013,1418-1420.

3)   門倉義幸:思春期にはたらきかけよう! 禁煙指導 

  歯科衛生士,クインテッセンス出版株式会社,東京,2014,38(6),64-65.

 4)   門倉義幸:耳鼻咽喉科疾患. 禁煙学,第3版,南山堂,東京,2014,69-72.

 5)    門倉義幸:からだに良いもの悪いものポイント20,クインテッセンス出版株式会社,東京,2017

 6)    IARC: IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Human. Vol 100(E) Personal Habits and Indoor   Combustions, WHO Press, Lyon, 2012.

7)    Takeshi Hirayama: Cancer mortality in nonsmoking women with smoking husbands based on a large-scale cohort   study in Japan. Preventive Med13:680-690,1984.

 8)    Yukiomi Kushihashi, Yoshiyuki Kadokura, Syuhei Takiguchi, Yoshiyuki Kyo,  Yoshihiro Yamada, Miki Shino, Masato   Kano, Harumi Suzaki: Association between head-and-neck cancers and active and passive cigarette smoking.

  Health 49:619-624, 2012.

9)    Gill Livingston, Andrew Sommerlad, Vasiliki Orgeta, Sergi G Costafreda, Jonathan Huntley, David Ames, Clive Ballard,   Sube Banerjee,Alistair Burns, Jiska Cohen-Mansfield, Claudia Cooper, Nick Fox, Laura N Gitlin, Robert Howard,   Helen C Kales, Eric B Larson, Karen Ritchie,Kenneth Rockwood, Elizabeth L Sampson, Quincy Samus, Lon S   Schneider, Geir Selbæk, Linda Teri, Naaheed Mukadamet: Dementia prevention, intervention, and care,

Lancet. 390:2673-734,2017.

 10)  Anil K. Lalwani, Ying-Hua Liu, Michael Weitzman: Secondhand Smoke and Sensorineural Hearing Loss in   Adolescents. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 137(7):655-662, 2011.

 11)  Weitzman M, Govil N, Liu YH, Lalwani AK: Maternal Prenatal Smoking and Hearing Loss Among Adolescents.

  JAMA Otolaryngol Head Neck Surg. 139(7):669-677, 2013.

 12)  上条篤,島田貴信,森山元大,高橋吾郎,増山敬祐:喫煙習慣と扁桃周囲膿瘍. 耳鼻咽喉科臨床99(11): 951-954, 2006.

 13)  Kuri M, Nakagawa M, Tanaka H, Hasuo S, Kishi Y: Determination of the Duration of Preoperative Smoking Cessation   to Improve Wound Healing after Head and Neck Surgery. Anesthesiology 102:892-896, 2005.

 14)  Paul F. Frey, Peter Ganz, Priscilla Y. Hsue, Neal L. Benowitz, Stanton A. Glantz, John R. Balmes and Suzaynn F.   Schick: The Exposure-Dependent Effects of Aged Secondhand smoke on Endothelial Function .

Journal of the American College of Cardiology 59:1908-1913,2012.

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